筆 者はこれまで、キェルケゴール・北欧神話・ウプサラ学派の価値ニヒリスムの三者を主要な研究対象としてきたが、それを基盤としてさらに筆者の関心は、現代 世界の抱える緊急の思想的課題 - 宗教・医療・環境の問題 - を解決する方向を、北欧思想圏の哲学的思惟を通して探るという目論見へ進んでいった。そ して、極めて貧しい試論には留まるが、それぞれの対象・主題について研究成果を発表することができた。しかし、現在筆者の願望は、従来の考察を一層ラディ カルに深めるとともに、そこからさらに浮かび上がってくる北欧固有の諸問題に対して総合的な検討を加え、その成果を体系的に「北欧学」という新たな学問に 結実させたいという方向に向かっている。筆者に残された時間は多くはないが、それへの積極的な挑戦が、ライフワークの主たる部分を占めることになる。
この場では、筆者がこれまで上梓した著作と翻訳を、研究業績として紹介すると同時に、続いて筆者がそれぞれの機会に発表してきた比較的短い論考を用いて、 必ずしも全体が体系的に組織されているわけではないが、現在筆者の念頭にあるかぎりでの「北欧学」なるものの構想内容と、想定される具体的な主題につい て、述べてみたいと思う。

2008/01/30

研 究 業 績

著作
『ディープ・エコロジーの原郷-ノルウェーの環境思想』

東海大学出版会 2006年。
『生と死・極限の医療倫理学-北欧スウェーデンにおける「安楽死」問題を中心に』
創言社
2002年。 
『スウェーデン・ウプサラ学派の宗教哲学-絶対観念論から価値ニヒリスムへ』
東海大学出版会2002年。
『北欧神話・宇宙論の基礎構造-《巫女の予言》の秘文を解く』
白凰社1994(京都大学学位論文)
『北欧思想の水脈-単独者・福祉・信仰‐知論争』
世界書院1994

その他。


翻訳

S.キェルケゴール:『畏れとおののき』『受取り直し』(キェルケゴール著作全集第三巻所収)
創言社
20085月刊行予定。
A.オルリック:『北欧神話の世界-神々の死と復活』
青土社2003年。 
S.キェルケゴール:『愛の業』(共訳、キェルケゴール著作全集第十巻所収)
創言社1991年。
S.キルケゴール:『野の百合と空の鳥』、(キルケゴールの講話・遺稿集第三巻所収)
新地書房1980年。
J.スレーク:『実存主義』
法律文化社1976

その他。